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院長ブログ

子どもは走る! 大人は・・?(2022.05.21更新)
下の子を毎日保育園に迎えに行くのですが、出てきた途端、駆け出します。別にどこかに向かうわけでも急ぐわけでもないのですが・・。友達と一緒だといつも以上に盛り上がり、広場で延々と走り回り続けたり、道路をどこまでも走って行ってしまったり。昨日も走り始めたと思ったら少し行ったところで 「今の(速さは)何キロくらいかな?」 「うーん、時速6キロくらいかな」 少し考えて「140キロじゃないかな?」 「そんなに速くはなかったと思うけど」 「じゃあもう一回」ダダダっ「今のは?」 「8キロくらいかな」 「140キロじゃない?」ぜんぜん納得してない表情。 どうやら最低でもチーターよりは速く走りたいらしい

子どもは急ぐ用がなくても走りたがります、少し高いところがあれば登ってみてそこから飛び降ります。大人からすると「なぜ?」と思うかもしれませんが、楽しいからです。こういった体を使った遊びは、ちょっとしたスリルを感じ、それを自分で制御し乗り越えることで達成感も生まれるのでしょう。これは将来的に危険を回避するための考えや行動のための学習でもあります。もちろん走ったり跳んだりすることで筋肉や骨を鍛え、身体能力を向上させることになります。体を動かすことは脳の発育にも良い影響を及ぼします。子どもの成績は勉強時間よりも運動時間(と睡眠時間)に比例すると研究でも示されています。

では大人はどうでしょう。全力疾走したのは何年前の記憶だろう、という人も少なくないかもしれません。趣味で運動でもしていない限り、通勤や買い物で歩く程度でしょうし、ここ数年はリモートワークとウーバーイーツでそれすらもかなわないのかもしれません。いつからこんなに動かないヒトになってしまったのでしょう。

子どもがじっと座っていることができず、やたらと走り回っていることをあまり喜ばしく思っていない親や保育士、教師もたくさんいます。みんな幼児教育の中盤から走っちゃダメとか、良い子はおとなしく座っててねとか、まるで座っていることが良いことで歩き回ったり走り回ったりすることが悪いことのように教え始めます。しかしヒトの体の機能から見ると、それは大きな間違いです。

では私たちはいつから動かない生活を始めてしまうのでしょう。幼児教育では、そうはいってもまだ座学の時間は少ないので、活動量はまずまず多いままでいられます。体を動かすことが純粋に楽しめるということもあるのでしょう。先進国の多くでは、残念ながら初等教育が始まると同時にかなり運動量が減り始めます。読み書きを学ばなければならないので仕方のないこととも言えますが、実にもったいないことでもあります。そのうちに動かない生活に慣れ、便利な乗り物に揺られて過ごすうちに、歩いたり走ったりすることは「喜び」から「疲れてだるいこと」に成り下がります。

ヒトは類人猿の中でもかなり動く種類として発達してきました。ジャングルに住むチンパンジーなど4足歩行の類人猿は、1日の大半を食べることや休むことに費やし(あなたのことではないですよ)、移動距離はせいぜい3~4㎞(いや、決してあなたのことと言いたいわけでは笑)、木に登るのも100mくらいのものです。一方、ジャングルを追い出された2足歩行のヒトは、かなり長い時間歩いたり走ったりすることで、いろいろな食材を手に入れるという生活を何百万年も送ってきました。当然、体の機能やエネルギーの使い方もチンパンジーとは異なるように発達してきました。ところがこの僅か100年ほどの間に移動手段は目覚ましい進歩を遂げ、ほとんど歩かなくてすむ生活を手に入れてしまいました。自ら動かなくても食べ物が十分手に入り、仕事でもデスクワークが中心になり、娯楽でさえもテレビやゲームなど体を動かさないものに支配されています。ヒトの体はたくさん動かすことを想定して発達してきており、わずか2~3世代で急に動かない生活をするようになっても適応しきれません。運動不足が心血管病を増やし、寿命を縮めるのは、体に備わった機能と実際に体を動かす量との不適合から起こると考えられます。今や運動不足は一つの「病」と捉えられるようになっています。

子どもを席に座らせるなんてことは、ずっと後になってからで良いのかもしれません。むしろ体を動かし続けることが普通のことだと、そして楽しいことだと覚えてもらう方が後々役に立ちそうです。そして無事にチンパンジー程度の運動量で生活する大人になってしまったヒトも、もう一度全力疾走ができるように今から体を鍛えなおしましょう。遅すぎるということはないですよ。

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