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調子が良いから大丈夫!は当てになるのか

[2020.10.21]
「調子が良い」という感覚は生きていく上で非常に重要なものだと思います。少なくとも「なんか調子が悪い」とか、「どこか悪いところがあるんじゃないか」と思いながら暮らしていくよりはずっと良いはずです。日々患者さんを診ていても、いろいろな方がいるものだなと感じます。調子良いよ、とか、絶好調!と毎回言う人もいれば、悪い病気なのではないかとか、心臓が止まってしまうのではないか(いずれは止まってしまうのですが)とずっと心配している人もいます。 もう一つよく聞く言葉に、「自分の体は自分が一番よくわかっている」というものがあります。何かの病気に兆候や症状があり、検査や治療が必要だという話をした時の反論としてしばしば登場します。調子の良し悪しは本人にしかわからない感覚ですし、長年使ってきた自分の体のことですからその言い分はよく分かります。医者のような他人に偉そうに言われたくもないのでしょう。 しかし、これらの「調子よい」「どこかに病気が」「自分が一番知っている」という感覚が、実際にはあまり当てにならないことを我々多くの臨床医は経験しているます。調子良いという、見た目にも元気そうな人が肝臓や膵臓、消化管の癌だったということはしばしば(苦い思いを持って)経験します。血圧や血糖値が高いから治療を勧めても、今は調子が良いし、自分のことは自分が・・というお決まりの言葉を残して帰っていった人を次に見るのは病院のベッドの上ということもあります。逆に病気を心配する人に検査をしても何も見つからないことの方が圧倒的に多いということも言えます。どうやら自分のことはわかっているようで、その実わからないことの方が多いようです。 最近知人の保健師さんから「血糖値300mg/dlって大丈夫なんですか?」。私「鳥や寒い所に住む生き物なら」。保健師さん「・・・」「医者が雑誌で血糖値や血圧が高くても問題ないと言っているのだけど、こういうの患者さんが真に受けてしまったら困るんですけど」という連絡(苦情?)を受けました。大統領(いや、社長というべきか)というような意味の英語の名前のあの雑誌です。医者は変わり者が多いと思いますが、その中でも群を抜く、とある精神科医と放射線科医が、偏狭に満ちた独自の理論をぶち上げる素晴らしい(!)企画のようです。雑誌も売れなくて苦労しているのでしょうね。その中でその精神科医が「私は血糖値300、コレステロール300、血圧160-170/-だが治療はしておらず、むしろこのくらいの方が調子が良い」!!! よく聞くやつです笑。ただし医者からではないですが・・。 ここまで読んだ皆さんは、医者の口から出た言葉であろうとこの主観的な「調子が良い」に騙されることはないでしょう。このような個人的な感想は他の人の健康には何の役にも立ちません(おそらくは当人の健康にも、残念ですが)。もっとも精神科医に手術を頼むのは、たとえ虫垂炎であってもお断りしたいのと同様、糖尿病や高血圧の治療もお願いすることはまずないはずです。そう考えれば、彼の言うことを真に受ける人もそうはいないでしょう。むしろ彼の健康をお祈りしたいくらいです。鳥だったら良かったのにね。
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