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なぜ子どものお菓子はあんなに甘いのか?

[2020.09.02]
子どもの頃に好きだったお菓子を久しぶりに見かけて、食べてみたらがっかりしたという経験はないでしょうか。また、子どもたちが喜んで食べている強烈に甘いだけのお菓子を横目で見て、何が美味しいのかしらと訝しんでいる人もいるのではないでしょうか。

味覚には甘味の他に、塩味、苦味、酸味、うまみがあるとされます。これらは舌で感じ取り、その信号が脳まで送られどのような味なのかを判断します。これとは別に嗅覚を主体とした食べ物の匂いや風味(こちらの方が組み合わせは膨大)、食感、食べ物の温度などが影響しあい、食べたものの味わいが決まります。それぞれ感じ方には個人差があり、また経験や好みなどによっても味の受け取り方が変わります。しかし「キットカットはサクッとしていて甘いチョコの風味のお菓子」というように、ある程度の共通認識はたいていの場合あります。

舌で味を感じる装置を味蕾といいます。この数は子どもの頃をピークに加齢とともに減っていきます。このことは加齢とともに味覚が鈍感になることを部分的には説明していますが、味蕾の数がすべてというわけではありません(味蕾の数だけで勝負するというなら、どんなにグルメを気取っている人でもナマズはおろか牛にすら勝てません)。味わうということに関して、子どもの頃がピークということはなく、年齢を重ねるごとにいろいろな味を理解し楽しめるようになります。つまり味わうことには経験や学習が必要であり、それを続けることでかなりの年齢まで発達させることができる可能性があるということなのでしょう。もちろんそのためにも子どものうちにいろいろな味を経験させることは重要ですし、工業製品のような食べ物ばかり与えることは避けるべきです。

子どもは苦味や酸味には特に敏感に反応し、たいていは嫌がります。これは腐ったものや毒のあるものを避けるためなのでしょう。しかしすべての味覚が大人よりも子どもが鋭敏かというと、そうでもないようです。たとえば甘味に関しては大人の方が感知する能力が高いようです。しかし(というよりそのため、と言うべきか)子どもの方がより甘いものを好む傾向があり、大人の5割増しなのだそうです。また大人になると苦味も(安全な食べ物であるとわかった上で)楽しむようになりますが、この苦味が甘さと一緒にあると甘味は和らぎます。だから甘いプリンでもカラメルソースがあると食べられてしまいますし、コーヒーがあるとケーキもぺろりといただけるのです(甘さはもともと一緒のケーキでも少し苦味をきかせると大人は美味しく食べられるのも同じこと)。しかし子どもにはまだその技が使えません。なので大人からするとただひたすらに甘いというようなお菓子を子どもは喜んで食べるのでしょう。

最近では「大人の~」というようなお菓子が売られています。おそらくは苦さを足すことなどで甘さを抑えているのでしょう。しかし、例えば大人味のキットカットなどはカロリーも糖質量も通常のものとほとんど変わりはありません。味が大人向けというだけで、栄養的に大人向けというわけではないので、そのあたりは誤解のないように。

子どもの頃プリンを食べるときに、できるだけカラメルソースがカップの底から染み出してこないように細心の注意を払いながらスプーンで掬っていたことが懐かしく思い出されます。だって苦かったんだもの。
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