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一病息災は確かにあるかも

[2019.01.10]

無病息災、という言葉は知っていたのですが、何年か前に、ある患者さんに「一病息災」という言葉を教えてもらいました。年をとって持病が一つもないとか、飲む薬が一つもないということは難しい。けれど一つくらい病気があって、そのために病院に通うようになると、普段からも健康に気を付けるようになる。これがかえって健康に生きられる秘訣なんだよ、ということでした。
実際には何か病気があれば、平均寿命が短くなるのが普通です。例えば糖尿病など持っていると、平均的には10年ほど寿命が短くなってしまいます。病気はそれ自体が命を奪うようなもの(癌など)であったり、さらに他の病気をもたらすようなもの(糖尿病→脳梗塞・心筋梗塞など)であったりし、そのために寿命が削られると考えられます。普通に考えても健康な人の方が病気の人より早死にするとは思えません。
しかし最近報告されたナチスによるホロコーストの生存者でのデータでは、この「一病息災」がきれいに示されています。

人生のどこかの時点で、厳しい環境にある程度の期間曝されると、その後の人生で病気になりやすくなってしまうことが言われています。それは母親の胎内にいる時から成人後まで、いつでも起こり得ることのようです。

そしてこのホロコーストという、強烈な環境を生き延びた人々にも、その後高血圧や肥満、糖尿病といった病気が多く見られています。しかしながら、ホロコーストの生存者は、それを経験していない同世代の人々に比べ死亡率が低いことがわかりました。
なぜこのようなことが起こるのか、はっきりしたことはわかりません。ホロコーストを生き延びた人というのは、もともと逞しかったり、環境の変化に順応しやすかったりするためかもしれません。もちろん、先ほどの「一病息災」的な考えもできます。病気があれば受診や検査を受ける機会も増え、早めに他の病気が見つけて対処できる可能性もあります。
病気になったからといって、それと向き合わず投げやりになるのはもったいないことだと言えそうです。病気になることを嬉しいと思う人はさすがにいないでしょうが、活かしようによってはより健康になれる可能性すらあるかもしれません。今まで病気に罹っていない人は今年も無病息災を願うと良いのですが、一病息災もまた捨てたものではないのですよ。

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