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白内障は手術すべきか?(すべき!)

[2021.12.07]
クロード・モネという画家の有名なシリーズで、睡蓮をモチーフにした絵画があります。50歳ころから80代でなくなるまで描き続けたものですが、憑りつかれたのか、または執念だったのか、これでもかというぐらいジベルニーにある自宅の池の睡蓮を描きまくっています。この絵を何枚か見たことがある人であればご存知かと思いますが、最初は色彩も輪郭もはっきり描かれていたものが、年齢を重ねていくうちにぼやけた仕上がりへと変化していきます。円熟期に入って画風が変わったということも多少はあるのかもしれませんが、主にはこれは白内障で次第に見え方が変わっていったためなのだと思われます。まだ白内障は現代のように治療できる時代でなく、極度の視力低下や失明の原因としてあきらめなければならなかった時代の話です。画家が次第に視力を奪われてくるということに対して抱く危機感や恐怖感は如何ほどのものかしれませんが(画家でなくても避けたいものですが)、しかしそれでも描き続け、白内障のおかげとまで言えるかどうかはわかりませんが、印象派と言われる画風の隆盛に大きな役割を果たしたことは間違いありません。

実は白内障とそれに対する治療の歴史は古く、紀元前からそれらしき記載はあるようです。しかし現在行われているような濁った水晶体を折りたたんだ眼内レンズに置き換える治療法は1980年代になりようやく盛んにおこなわれるようになりました。そして最近では眼科医が一人開業すると、その近所から白内障がいなくなるという冗談が言われるようにまでなっています(実際そんなことはありませんよ)。

白内障の手術を受ける人は近年多くなっていますが、それでも、手術を受けるべきなのか(あんまり不自由感じていないし)、いつ受けるべきなのか(あと何年生きられるかわからないし)といった悩みを抱えている人は多いようです。そんな人の判断の一助となる研究結果が最近報告されていました。これは白内障手術と認知症の関係を調べたものです。この研究結果によれば、視力が改善するような白内障手術を受けると、受けなかった人に比べ3割近く認知症の発症が少なくなるそうです。難聴が認知症を増やすことは知られていますが、はっきり見えなくなるということもまた認知機能に悪影響を及ぼすということのようです。

白内障で見えずらいと感じてきたら、手術を受けることを前向きに考えることは、やはりお勧めのようです。そして手術を受けたらジベルニーか、それが遠すぎるというなら近くの公園の池に行って睡蓮の絵を描きまくりましょう。
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