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糖尿病の食事療法

[2019.01.24]

”糖尿病 食事療法”とネットで検索すると、東京都病院経営本部とか国立国際医療センターといったHPが上位に上がってきます。中身は同じようなもので、大真面目に(たぶん)「標準体重×25~30kcal」とか、食品交換表(家電製品の取扱説明書のようなもの。わかりにくいし、そもそも誰も手に取りたがらない)を使って1単位を80kcalとして計算しましょう、みたいなことが書かれています。もともとは糖尿病学会がこういったことを推奨していたものであるため仕方のないことかもしれません。しかし今どきこのようなことを真に受けてHPに記載したり、これに基づいた食事指導をしているとしたら時代錯誤の感を否めません。
現在私たちが実践しようとしている医療は、可能な限り根拠のある証拠(研究結果)に根差したものでなければなりません。その考えから治療に最適な薬を選択し、また不必要な投薬を控える(風邪に抗生剤を処方しないとか)ということが様々な病態に対し推奨されています。
食事療法も当然ながら医療の一つのはずです。しかし残念なことに前述した食事療法には明らかな根拠がなく、ともすれば近年の研究で正しくないことが証明されています。それなのに長年これが正しいように患者さんに押し付け、実践できないことを患者さんのせいにしてきました。大変残念な歴史、と言いたいところですが、現在もまだそのような状況が続いているところがあるようで、過去のものとはなっていないようです。
なぜこのようなことになったのか。食事や運動といったものの効果は研究結果として表しにくいということがまずあります。それに多くの医者は投薬には興味がありますが、食事や運動についてはあまり興味がありませんでした。さらに多くの栄養士もただただガイドラインに則って食事指導をしていたということもあります。
近年では「標準体重」ということはあまり考えません。これはBMIが22が一番長生きそうだというデータに基づくもので、みんながこんな体形になったらいいな~、という安直な発想から出てきたものです(たぶん)。ですが多くの人が気づいている通り、みんなが同じような体形になることなどあり得ません。また「×25~30kcal」(生活するのに必要な体重当りのエネルギー)という掛け算も正しくないことが示されています。私たちが普通に暮らしている時、消費している(=摂取している)エネルギーは「実体重×35~40kcal」程度になります。つまり糖尿病と診断された肥満体型の人は、拷問のような(飢餓のような)食事指導をされていたわけで、それが長らく続くことなどないのが当然だったと言えるでしょう。
米国や欧州の食事ガイドラインはどんどん変わっており、近年では食事指導をカロリー計算して行うことは少なくなっています(食べている食事のカロリーを把握することは極めて困難。また1単位=80kcalなんていうルールは他のどこにも存在しない笑)。そちらでは投薬に関してのガイドラインも頻繁に改定されています。それに比べ相当腰が重いのが日本の学会ですが、それでも今年の春にようやく食事指針も改訂されるようです。多くの医師や患者さんにとって理解しやすく使いやすいものになることが期待されます。

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