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肥満 糖尿病 GLP-1注射

[2019.10.01]

糖尿病の治療はこの10年ほどで大きく変わりました。以前はインスリン分泌刺激薬(いわゆるSU薬)が非常にたくさん使われていましたが(今でも他のクリニックで大量に処方されているのをたまに見かけて驚きますが)、近年では糖尿病専門医はまず行わなくなっています。それに代わってDPP4阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬といろいろな意味で良い薬が出てきています。
過去の薬やインスリン注射は、もちろん良いところもありますが、体重が増えやすいところが難点でした。しかし近年の薬は体重が増えることがなく、特に上記のうち後2者は体重が減るという、肥満糖尿病では大きなメリットとなる作用があります。その作用もあって、これらの薬を使うと糖尿病だけでなく脂肪肝や高血圧、脂質異常もある程度改善されます。また心血管病を減らすことも報告されています。
GLP-1受容体作動薬の中でもリラグルチド(日本ではビクトーザ)というものは、欧米で肥満治療薬としても承認され使用されています。年単位の使用でそれなりの体重減少が維持されており、糖尿病発症予防にも役立っているというデータが示されています。同類のセマグルチド(日本未発売)は週1回の投与で、糖尿病治療薬としては既存のものを上回る効果が期待できそうです。また今までのGLP-1受容体作動薬は注射薬でしたが、セマグルチドでは経口薬も開発されており、市場に出てくる日も遠くはなさそうです。
GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬としてとても良い薬なのですが、今のところ注射薬しか使うことができません。毎日注射(リラグルチド)か、週1回注射(デュラグルチド)の選択になります。注射薬という煩らわしさと痛みのイメージ、またかつてのインスリン注射の印象(糖尿病がとても悪い人が注射になると言われていた時代)などがあり、こちらで使用開始を提案しても二の足を踏む人が少なくありません。経口薬が出る日も遠くはないと書きましたが、実際のところ日本で使われるようになるにはまだまだ何年もかかることでしょう。GLP-1受容体作動薬の注射薬を始めてみると、たいていの人がデータや体重が改善しますし、やめたいという訴えはほとんど聞かれません。もっと積極的に使われてよい治療薬だと考えています。
注射薬をかたくなに拒むのは男性に多い気がします。これは私の思い込みなのかもしれませんが・・。注射=痛い、という強い負のイメージが私を含め多くの人(特に男性)にあるようです。しかし実際のところ注射針は非常に細く、注射を始めてみると痛みの不満を漏らす人もほとんどいません。
子どもに注射を打つ時には「痛くないよ」とは決して言わないほうがいいですが(痛いに決まっている)、糖尿病の自己注射をためらう人(特に男性)には、自信を持って「(あまり)痛くないよ」と言ってあげましょう。

私は小さい頃から超ビビりで、注射や血を見るのも大っ嫌いでした。これを書いていて思い出したのですが、まだ小さい頃に近所の医院で耳たぶから1滴血を搾り取られただけで倒れてしまい、待合室のベンチにおばあちゃんたちに囲まれながら寝かされていたこともありました。今、息子が小さい傷から血がにじみ出ているのを見ただけで「もうダメだ」となっているのを見ると、つくづく似ているなあと思います。その気持ち、よくわかるよ。

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