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肺癌

[2017.06.19]

芸能人の方の肺癌にまつわるニュースがいくつか続きました。今のところ肺癌は罹る人も死亡する人も多い癌と言えます。一つには、喫煙率が高かった世代が高齢になり肺癌を発症するようになっているためと考えられます。とすると、喫煙率の低下に伴って統計的にはあと10年20年先には自然に肺癌は減っていく可能性はあります。しかし肺癌には喫煙が大きく影響するものと、喫煙と関係がないものがあり、そういった点からもまだまだ先の動向は不明です。
肺癌はなかなか治療しきれない癌です。手術で取り切れてそのまま元気でいられる人もいますが、それができなければ抗癌剤や放射線治療を行うことになります。年々治療法も改善されてきており、生存率も上がってきていますがそれでもまだまだというところです。また最近では一部の抗癌剤の値段がものすごく高価であることも問題になってきています。
もう20年ほど前の話になりますが、私が研修医になって初めて担当したのが肺癌の患者さんでした。何人かの患者さんを受け持ったのですが、皆さん優しい方で駆け出しの研修医にもとても優しく接してくれました。様子を見に行くと大抵みんな身の上話など聞かせてくれましたし、人生の先輩として社会人1年目の研修医にいろいろなことを教えてくれました。
その中の一人に、ある高齢の男性患者さんがいました。この方は入院してきた時にはすでに状態が悪く、治療の甲斐なくたった数週間で亡くなってしまいました。人懐っこい方で、酸素マスクをしているくらい苦しい中でも、ベッドサイドに行くたびにニコニコといろんな話をしてくれました。お亡くなりになった後にご家族とお話しする機会があったのですが、私が毎日顔見に来るのをとても楽しみにしていたと教えてくれました。それと同時に彼のある失言(というほどのものではなかったのですが)が私を傷つけたのではと、心配していたことも教えてくれました。研修医の無力感に打ちひしがれていた私は、それを聞いていろいろな感情が込み上げてきて、涙が止まらなくなってしまったことを今でも覚えています。
今でも外来をやっていて患者さんから教えられることはたくさんあります。そのことをありがたく感じると同時に我々医療者は、検査をして薬を出す以外にもできる何かがあるということを、心に留め置いて日々診療にあたらなくてはならないと考えています。

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