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脂肪のはなし

[2018.04.19]

最近ネットでたまたま「肥満と言われても!脂肪って・・」という、栄養士さんが書いた記事を目にしました。要点が掴みづらい上に、いわゆる”突っ込みどころ満載”なものですが、おそらくは人体は昔からエネルギーを脂肪として蓄えるようにできている、というようなことが言いたかったようです。オールアバウトからの発信でYahooニュースで配信されていたため多くの人の目に触れたと思いますが、せっかくなのでそれをもとに少し整理して書いてみます。
現生人類は20-25万年前頃に登場したと考えられます(もしかするともっと古い可能性も)。狩猟採集時代が長かったとされますが、実際には採集が主な食糧調達の方法で、狩猟が主なカロリー源ではなかった可能性もあり、どちらかと言えば採集狩猟の順なのかもしれません(場所や時代によるのでしょうが)。食料保存や農耕も1万年以上前には始まっていたとされており、どちらもそれなりに古い歴史があります。冷蔵庫はなかったと思いますが、似たような環境で長らく人類が暮らしていたという跡も見つかっており、食料保存は決してごく最近の発明ではないようです。
この記事には、こうした生活史がヒトが脂肪を蓄積する生き物にしたように書かれていますが、牛でもネズミでも脂肪としてエネルギーを蓄えるようにできています。旧人類や猿人にもこれはあったことでしょう。もっと言えば大抵の生き物はエネルギーを蓄えるシステムを持ち合わせています。
また食べる順列が➀男➁子ども➂女であったから女性は太りやすい、としていますがそれも正しくはないでしょう。初期の現生人類がみんなそのような順序で食べていた証拠はありませんし、脂肪のつき方の雌雄差は他の動物にも広くみられます(他の動物にもみんな食べる順列があって脂肪のつき方が変わるとでも?)。最も大きく影響するのは性ホルモンの違いだと考えられます。
脂肪細胞がエネルギーを蓄えることは間違いありません。脂肪細胞はエネルギーが過剰な状態ではどんどん大きくなっていきます。こういった状況下では大人になってからでも脂肪細胞はその数が増えることがわかっています。ただ脂肪細胞の役割はそれだけでなく、さまざまな物質を分泌しています。つまりただの貯蔵庫ではなく、巨大な内分泌器官でもあると言えます。脂肪細胞が小さいうちには体に良いものが放出されますが、脂肪細胞が大きくなると炎症を起こすような悪いものが作られるようになり、良いものが抑えられてしまうというのが大雑把なイメージです。
体の脂肪が減ることに関しては、生命の危機となり得るため(と考えられる)、食欲を増し体を動かさないようなホルモンバランスにシフトします。しかし太っていくことに対しては強くブレーキをかけるシステムがなく、このことがヒトが太り続けている一因であると考えられます。しかし他の動物でもえさを与え続ければどんどん太っていくことを考えると、長らく飢餓に曝されてきたためにヒトだけが得た特別なシステムということでもないのかもしれません。

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