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輸血で変わるもの

[2017.10.24]

輸血を受けると性格が変わる、という話は昔からしばしば耳にします。インターネットで検索しても山のようにその手の話が上がってきます。
血液型は赤血球の表面にある小さな蛋白質(抗原)の性質の違いにより分かれています。実は血液型にはいろいろな分類方法があるのですが、有名なのはABO式とRh式の2つです。この2つが大事なのは、これが合致しない型の血液を輸血すると、輸血された人の体内で強い反応が起こり命を落とす危険すらあるからです。
では、同じ型の血液が輸血されたとして性格まで変わるのでしょうか?イメージとしては輸血された血液がずっと体中を巡っていると捉えている人もいるかもしれません。しかしおそらく輸血された赤血球は数か月以内にすべて分解されるため、そのままでずっと残るようなものはありません。赤血球の一部が一時的に他人のものに置き換わっても、それがその人の性格を変えてしまうということはなさそうです。
輸血を受けなければならないような事故や病気をしたこと自体が、その人の人生観や死生観に影響を与えるかもしれません。また状況によっては、脳の中で血流が一時的に保たれなかったり、小さな血管が詰まってしまったり、衝撃で小さな傷がついたりすることで、脳に小さな変化を残す可能性もあります。こういったことが性格を大きく変えるかどうかはわかりませんが、その人の考えや行動を少し変えることはあり得ます。
ところで、輸血で変わるものもあるようです。献血をした人が女性の場合、妊娠歴があるかないかで、その血液を輸血された人の死亡率が変わるかどうかを見た最近の研究があります。それによると、男性が妊娠歴のある女性からの輸血を受けた場合に、その後の死亡率が高くなるという結果でした。なぜそのようなことになるのか、はっきりしたことはわかっていません。
輸血という治療法はそれなりに歴史の古いものですが、まだまだわかっていないこともあるようです。でも輸血で救われる命はかなり多いはずで、献血という行為がとても尊いものであることは間違いありません。

2019年6月追記 今月には輸血のドナーの性別や妊娠歴と、輸血を受けた側の死亡率に差はないという研究結果が報告されています。この論争はまだまだ続くのかもしれませんが、今のところそれほど気にする必要はなさそうです(輸血を受ける時というのは、たいがい気にしている余裕もないものですが)。
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