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電子タバコも喫煙です

[2018.09.14]

ついに男性の喫煙率が3割を切ったと厚労省から発表がありました。女性は7%台で、全体で17.7%となっています。男性の喫煙率はこの10年で1割程度低下しており、全体としても低下傾向が続いています。これは公衆衛生的には望ましい結果ですが(まだ不十分ですが)、たばこ会社にとっては未曽有の危機と言えます。そこで電子タバコを、あたかもたばこではないもののように売り始めました。
外来に通院されている70歳くらいの男性患者さんに禁煙を勧めたところ、「電子タバコなら問題ない?」と聞かれました。喫煙が体に悪いということは何となくわかっているのですが、今すぐやめるということはできないようです。電子タバコもやめてすっぱり禁煙してしまえば、癌はともかく動脈硬化や肺機能には数年で良い効果が得られるはずだと説明しました。今まで大病せずにこれたことは運が良かったと思って、どうせなら禁煙してしまえば良いのでは、と話したところ、「そうか、もうお釣りの人生なのか」と妙な納得をして帰っていきました。
実際のところ電子タバコが今最も問題となるのは未成年者を含む若者の使用でしょう。従来の「臭い」「煙い」ものではなく、身体にも一見悪くなさそうな(実際には悪いようです)イメージを打ち出し、(電子)たばこを気軽に始められるようにしています。米国では早くも未成年者の電子タバコ使用が問題となっています。米国では最近、未成年に販売していた店舗を一斉摘発し、今後はフレーバーのついた電子タバコの販売を禁止する方向で検討しているのだそうです。
肺癌をはじめ喫煙を原因とする癌は、ある程度の年数を置いてから発症します(もちろん肺癌がすべて喫煙によるものというわけではありませんが)。喫煙率が低下しているのに肺癌になる人が依然多いのはそのためです。しかし喫煙率が低下し続けていれば、いずれ肺癌も減ります。最近のデータでも肺癌の生存率は3年で50%、5年で40%程度であり、まだまだ根治は難しい病気と言えます。
せっかくこれから肺癌が減ってくるというのに、若者が気軽にたばこに手を出してしまっては元も子もありません。ただ、若者に「将来癌になるかもしれない」という言葉が、それほど強い抑止力になるとは思えません(癌年齢の中高年だって禁煙できないくらいですから)。やはり日本でも政府主導の、未来を見据えた強い政策が望まれます。今のところまったく期待はできませんが・・。
先ほどの男性患者さんは、その次の受診日に「先生、禁煙したよ!」と言いながら入ってきました。「先生に”お釣りの人生”なんて言われて悔しかったからさ」(言ったのはご自身で、私はそこまで口が悪くはないので・・)

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