メニュー

高血圧はきちんと治療しましょう

[2018.03.12]

最近、本や雑誌で高血圧の治療はすべきでないとか、体のどこかを揉んだら高血圧が治るとかいった類のものを頻繁に見るようになりました。高血圧の人が日本だけでも何千万人といるので、高血圧に関する書き物が多くの人の注意を引くことは確かです。また他の人が言っていないような変わった方法や、楽な方向のものはより興味を掻き立てます。
これらを書く人の肩書もいろいろです。医者が多いようですが、医学博士(医師免許はなく医学部の大学院を修了した人が多い)、トレーナーから何をやっているのかよくわからない人までいます。何を書くのも基本的には自由ですし、みんな書くからには売り上げを伸ばしたいという気持ちはよくわかります。ただその多くは著者の思い込みと、それを補強する都合の良いデータばかりを集めた非常に偏った一意見に過ぎません。
もともと医者など、人の役に立つようになったのはごく最近の話です(これにも賛否あるでしょうが・・)。それまではそれぞれの思い込みで診断と治療を行っていたわけで、毒にも薬にもならないものであるか、さもなくばせっせと患者の命を縮めていたと考えられています(代表的なものだとあらゆる状態の患者に瀉血(血を抜くこと)を行っていたことなど)。そういった意味ではまじない師と同じような立場であった歴史が長いのですが、現代の医学に繋がる土台を気付いてきたことも、また間違いないことなのでしょう。
医学が診断や治療において飛躍的な進歩を遂げたのはこの100年程のことです。そして常に新しいものへと塗り替えられています。皆さんは100年前(1900年代前半)の治療を受けるなんてことになったら身の毛もよだつ思いをするでしょうし、50年前の治療と言われてもしり込みするでしょう。いろいろな情報が蓄積・統合され、様々な研究がなされたことできちんとした病気の理解ができるようになりました。また治療方法も試行錯誤され、特に薬の開発が非常に大きな恩恵をもたらしています。現在ではこういった診断・治療がどのような結果を実際にもたらしたかという、いくつもの研究結果を踏まえた上で治療法が確立されています。
もちろん今の医学が完全なのもではなく、これからさらに変化していくのは間違いありません。また治療薬の開発がさらなる問題を引き起こしているのも事実です。しかし現在の医学的知見や可能な治療法の範囲から私たちは今できる最善な選択をすべきで、その手助けをするのが医師などその知識を持つものの役割です(これで医者もようやく少し役に立つ時代に・・)。
一個人の経験談や健康法、偏った医療記事などは、エンターテインメントとして楽しむには良いですが真に受けるのはお勧めできません。ごく限られた一部の人には当てはまるかもしれませんが、多くの人にはおそらくは利益をもたらさず、もしかすると実践することで体を害することもありそうです(そういった意味では中世までの医療に逆戻りです)。高血圧に関していえば、脳卒中や心疾患のリスクであることは間違いありませんし、他にどのような病気やリスクを持っているかによって人それぞれ治療目標や薬が違います。少なくともそういった記事から自分に都合よいところだけを抜き出して、薬を勝手にやめてしまうことや治療をうけないことがないようにして下さい。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME