メニュー

ニセモノかホンモノか ワクチン接種の誤謬など

[2021.06.09]
ウチの3歳児とのある日の会話 「今日ワンワン見たよ」 「そう」 「でも動かないやつだった」 「そうか」 「だからホンモノじゃないんだよね」 「そうだねー そいつはニセモノだね」 ・・・ 「じゃあお家も森もニセモノだね。動かないもん」 「いや・・そういうことでは・・」 「パパはどっち?ニセモノ?」(ニヤニヤしながら)

結構動いていると思うけど

同じ情報に触れるとしても、基本的な理解や考え方が違えば、解釈もまた全く異なることになりえます。情報がニセモノかホンモノかを見極めることや、数字などであらわされた客観的事実をどう解釈するかは、その人の元々の態度や考え方ですでにかなりのところが決まってしまっているのかもしれません。このあたりのことは古くて新しいワクチンにまつわる話にも多々見られます。

もともとワクチン懐疑論は根深いものがあります。細菌やウイルスを体に注射するなんておぞましい(そもそもワクチンの原理を理解していない)という人や、ワクチンが自閉症など他の病気をもたらすと信じている(科学的に否定されているものの)人など、いろんな考えの人がいます。こういった考えはインターネットなどで同調の意見を見るごとに補強されていきます。しかしこれが生涯不変というわけではありません。多くの人はいろいろな情報に接する中で考えを変えていきます。そういった信念を否定する情報に接しても変えられない人は、もともとワクチンは危ないものだと思っていた人に多いようです(何かを読んだから懐疑的なったというのでなく)。

クリニックに通院する患者さんたちの反応もこういった感じです。半年前まではワクチンを「あんな危なそうなもの大丈夫かね?」「俺は絶対に打たない」と言っていた人たちが、その後は「待ち遠しいね」「日本は遅いね。政府は何してたんだ」と言い、結果的にご高齢の方のほぼすべてが接種を受けています。中には「遺伝子がいじられる」とか「全員には効かない」と家族に言われ接種を反対されているという人たちもいました。mRNAを利用したワクチン=遺伝子改変、9割に効果的=1割は無効、という発想から生まれる考えなのでしょうが、ここにもワクチンに対する元々の見方(偏見)が影響しているように思えます。

子宮頸がんのワクチン接種についても、日本はかなり遅れを取っているという残念な状況にあります。ワクチンの副反応とされたいくつかの事例がメディアで取り沙汰され、国は推奨を取り消してしまいました。しかしその後の調査では因果関係は否定され、最近の海外からの報告でも特異な副反応は多くないとされています。欧米ではその間にも接種は進められ、子宮頸がんの発症予防や前がん病変の発症予防、パピローマウイルスの感染率の低下といった効果が次々と報告されるようになっています。このままでは近い将来、ワクチン接種を推進した国々と日本で、子宮頸がんの発症率やそのために命を落とす人の数に大きな差が出ることがWHO始め国内外から心配されています。政府もマスコミも一向にやる気を見せませんが・・。 現在の医学は、医者の直感や人々の限られた経験ではなく、科学的エビデンス=証拠に基づいて行われるようになっています。もちろん現在正しいとされる考えが将来的に覆されることはあり得ますし、歴史も時にそれを示しています。しかし現状で最善の選択をするためには、漠然とした不安や恐怖、そして思い込みや偏見に囚われず、広く出所が正しいと思われる情報を収集して判断する努力が必要です。「動かぬ証拠」は動かなくてもニセモノではないのだよ。
▲ ページのトップに戻る

Close

HOME