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糖尿病の薬をどうやって決める?

[2020.02.07]
糖尿病は今ではありふれた病気の一つになっています。糖尿病が贅沢病と言われていたのはもうだいぶ昔の話で、昨今では糖尿病や肥満はむしろ貧困との繋がりが言われるほどです。贅沢病と言えば、古くは我が世の春を謳歌した平安貴族の藤原道長は糖尿病だったと言われています。ただ贅沢できる環境にあっても、飲み食いしまくるかどうかは個人の価値観によるようで、徳川家康などは食事に相当気を使っていたという話もあります。そのおかげかだいぶ長生きしています。貧しい時代の後には、お金持ちになった人はそれを見た目にわかりやすくしたいものなのでしょう。ひと昔前まで、企業の社長や大物政治家などはでっぷりしてモクモクと紫煙に包まれているというのが相場でした。しかし今ではその姿は経済発展を遂げた国での貧困者の典型的な姿とされており、リーダーに求められる姿ではなくなっています。

糖尿病は戦後の食糧事情の改善とともに急激に増え、今や大人が7-8人集まれば糖尿病の人が一人はいるという程になっています。でっぷり太ってしまった人はもちろんのこと、それほど太ることがなくても日本人を含めたアジア人は糖尿病になりやすいということが言え、近年アジアでも糖尿病人口は爆発的に増えています。おそらく50‐60年ほど前にこのような時代になるとは多くの人が思ってもみなかったでしょうが、今や世界を見渡しても飢餓で亡くなる人より食べ過ぎや肥満に起因する病気で亡くなる人の方がはるかに多くなっています。

糖尿病はある程度予防ができる病気なので、面倒だと思ってもならないように注意しておくことが労力もお金も寿命も結果的にはお得です。しかしもしなってしまったら・・きちんと治療を受けるしかありません。きちんと、というのは通院や服薬を怠らないとか食事運動を心がけるということの他に、きちんとした治療を提供してくれる医療機関に通院するという意味も含みます。

これだけ糖尿病患者さんが増えると、みんなが専門医の治療を受けるということは考えられません。通院の利便性はとても大切な要素ですから、近所の内科・外科みたいな診療所で治療を受ける人も多いでしょう。勉強熱心で、様々な知識を事あるごとに刷新している医師は大勢います。が、残念なことにそうではない医師もいるようで、時々驚くような処方内容の薬手帳を目にすることがあります。糖尿病に関してはこの20年の間に劇的に治療が変わりました(多くの分野で同じことが言えますが)。逆に言うと、たくさん薬をもらっているけど、この10年20年でその内容が変わらないというのは、見直してもらう価値があるということです。

近年の糖尿病治療薬で心血管病や死亡率への影響をみた研究をまとめたものによると、SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬といった近年使用されるようになった薬剤は良い結果を残しているとされています。逆に以前にたくさん使われていたアマリールという薬は脳梗塞を増やしてしまうという結果です。アクトスという薬は心不全は増やしてしまいますが、狭心症などには良い効果が得られています。ここにはありませんがメトホルミンという薬は、近年のデータはあまりないものの安価で効果もあり欧米では第一選択薬として推奨されています。

こういったことなどを勘案しながら薬を決めていきます。糖尿病は生涯にわたる病気であり、治療や途中経過によって最後には大きな違いが生まれてしまいます。もし今の治療に少しでも疑問や不満があるようなら一度近くの専門医に診てもらうと良いでしょう。
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